Route: Ray Train

VR,ヴァーチャルインスタレーション

2022

VR 空間で構築された電車の車内から、その車内に窓から入り込む光が後ろへ後ろへと流れていく様をVRヘッドマウントディスプレイを使用して鑑賞するヴァーチャルインスタレーション作品である。

現実世界では発せられた光は光源となる物体が必ず存在し、人間はその光源が何かを無意識下で探してしまうが、この作品では電車に入り込む光には光源が存在しない。光源が存在しない光はさまざまな色をしていて、鑑賞者は乗っている電車がどのようなものの間を走っているのかを想像する。演出として設置された意味のない光であっても、何もないはずの光源はどんなものかを無意識に連想してしまう。
車内では、これらの光と車内で生成された反射光しか存在しない。現実空間で生活をする私たちが意識せずに見ている光はどんなものなのだろうか。

この作品は論文『光を扱う美術̶オプティクスアートとレンズの関係性の研究』(志村俊輔 /simsuke、2022) 中で示した “オプティクスアート” の概念をもとに、その条件に合致するように制作をした。その条件とは以下の通りである。

  1. 光を取り入れ、その範囲を決定する枠、取り入れられた光によって光学現象を起こすレンズ、それらを受け取る支持体の3点が揃って存在すること
  2. 箱や部屋などの空間内部に支持体が存在するインスタレーション作品であること
  3. 鑑賞する際に、鑑賞の位置や時間によって加工された光の形状や色などが変化すること

オプティクスアートの3つの要素について検証すると、枠は電車の窓、レンズは窓枠や天井や床や壁、支持体は車内全てと鑑賞者の目、空間はVR 空間に設置された電車(2両)である。電車周辺の光の移動や鑑賞者がVR 空間内を移動することで、光の見え方も変化する。

タイトルであるRoute: Ray Trainは、光の間の道を進む電車であるのでroute、そして 3DCGにおいて光線をシミュレーションする技術 “ray trace” とtrainとかけたものである。